このページでは、上陸特別許可(過去に日本で不法滞在、犯罪等で退去強制処分を受け、上陸拒否期間中に日本に入国できるようにする事)申請のポイントをご紹介しています。ご参考になれば幸いです。
上陸特別許可といっても、配偶者を海外から呼び寄せる場合は、通常の配偶者ビザの認定証明書交付申請を行えばよく、何か他に特別な申請があるわけではありません。通常の配偶者ビザの申請を行い、申請人(海外在住の配偶者)が入国拒否者に該当していれば、そのまま上陸特別許可としての審査が開始されます。
1 上陸特別許可の基本的な要件
上陸特別許可(日本入国拒否期間中の日本入国)を得るには、まず以下の要件を満たしている必要があります。
- 法的に婚姻が成立しており、婚姻の信ぴょう性が高い事
- 許可時に、退去強制後2年以上が経過している事
- 結婚後1年以上が経過している事
- 入管法違反で執行猶予付き有罪判決を受けた場合は、執行猶予期間がおおむね終わっている事。
これら4つが最低限の要件となります。しかし、これら4つが満たされていないからと言って必ず不許可となるということではありません。また、これら4つが満たされているからと言って必ず許可が下りるわけでもありません。上陸特別許可の判断は、犯罪の軽重、経過期間、5年・10年・永久拒否のどれなのか?日本にいる配偶者との関係性、これまでの婚姻生活状況、その他特別に上陸を許可すべき人道上の事情、等と総合的な判断となります。したがって、上記の要件を満たしていない項目があったとしても、一度申請をトライしてみても良いと思います(不許可の可能性はありますが・・。)。「上陸特別許可を申請した」という事実が海外にいる配偶者への思い=婚姻の信ぴょう性を表現している事にもなります。
注意点ですが、上陸特別許可の許可取得の難易度ですが、日本にいる配偶者が日本人であればそれほど高くはないと考えています。しかし、日本在住の配偶者が「永住者」や「定住者」である場合は、配偶者が日本人の場合と比べて、はるかに難易度が高くなると実感しています。 この場合は、申請書類(立証すべき事柄)のすべてに、かなりの信ぴょう性、正確性、合理性、整合性等が要求されます。 また、二人の間に実子が存在するかどうかも特に重要です。
2 上陸を特別に許可された事例
法務省HPでは、「上陸を特別に許可された事例及び上陸を特別に許可されなかった事例について」公表しています。
法務省HP「上陸を特別に許可された事例及び許可されなかった事例」
まずは、この事例を参考にして、ご自身の状況と照らし合わせてみて頂きたく思います。これら事例を参照すれば、上述の4つの要件を満たしているからと言って必ず許可が下りるわけではないことが分かると思います。
それでは、一体何が許可・不許可を分けるのでしょうか?それは、上陸特別許可は、「家族の結合の必要性」など「人道的な観点」から考慮され特別に許可されるものですので、「そのような理由が自分たちには存在する」という事を立証し尽くす事だと考えます。
3 上陸特別許可のための申請書類について
「過去に犯罪をしましたが、家族が日本で一緒に生活したいし、する必要がある。」という事を立証するための申請書類を用意しなければなりません。また、過去に入管法違反などの犯罪を犯していますので、「もう一度日本に入国しても日本社会に害を与えるようなことはありません。」ということも信ぴょう性をって説明しなければいけません(申請人の状況にもよると考えます。)。
上記の事柄を立証するために必要となる書類や資料を列挙致しますので、上陸特別許可を考えている方は、常日頃から立証資料の作成、収集に留意して頂きたく思います。実際申請では、どのような資料をどれほど提出するのか?結婚に至った経緯書を何ページ分くらい作成するのか?写真を何枚提出するのか?反省文を提出するのか、提出するにしてもその分量は?などの事柄は、関係者全員のこれまでの在留状況や現在の状況、その他様々な考慮要素によって調整します。
- 出会ってから退去強制され、上陸特別許可申請するまでの詳細な経緯書
- 婚姻に至った経緯を立証する資料(交際写真、メール履歴、電話履歴、手紙、お互いの真摯の愛情が分かる資料など)
- 子どもとの交流を立証する(交流写真、手紙、メール履歴、電話履歴、子供との絆がわかる資料など)
- 同居事実を立証する資料(同居時の写真、昔の住民票など)
- 退去強制された後の交流(海外に会いに行った時の交流写真、電話履歴、メール履歴、送金資料など)
- 親族知人からの嘆願書
- 反省文、誓約書(退去強制処分を受けてしまったことへの深い反省、謝罪文、再犯しない説得的な理由など)
- 収入に関する資料(在職証明書、所得証明、技能に関する証明、残高証明、資産に関する証明など)
特に、退去強制された後の海外配偶者との交流や子供との交流の資料はとても重要ですので、あらゆる物を準備しておきたいものです。
注意点は、たくさんの資料を用意し、結婚経緯書も何十ページに渡りますので事実と違う内容を誤って記載してしまう事もあります。その場合は、すぐに不許可方向に流れていきます。記憶があいまいな事は記載しないようにしましょう。また、嘘や不利益事実を隠したりするのは、当然ですが、即不許可となります。嘘を吐くのではなく、不利益事実を隠すのではなく、それを補って余りある「家族、夫婦の絆」を主張します。
4 配偶者ビザ以外の上陸特別許可について
日本に入国したいという方は、日本人や日本在住の永住者の方と結婚した方だけにとどまらず、ビジネスや留学など様々な目的があると思います。その場合は、当然、適切なビザを取得して来日する事になります。
そこで問題となるのが、日本入国拒否期間がまだ経過していないのにも関わらず、配偶者ビザではなく技術・人文知識・国際業務や経営・管理ビザ、留学や家族滞在ビザで来日できるかどうかです。
結論から言えば、配偶者ビザ以外で許可が下りたという事例を聞いたことがありませんので、おそらく許可は下りないと考えています。上陸特別許可の判断には、上述の通り、「家族の結合=人道上の理由」が大きく影響します。したがって、家族の結合を主張できる配偶者ビザにしか許可は下りそうもありません。
「家族の結合」を考慮してくれるのならば、家族滞在ビザはどうか?と思われるかもしれません。しかし、様々な理由が考えられますが、これも許可が下りたという事例を聞いたことがありませんので、とても難しいと考えています。家族滞在が下りないのであれば、その他の就労系ビザは、ほぼ絶望的と言わざる負えません。