企業内転勤ビザの審査ポイント

 このページでは、企業内転勤ビザの入管審査のポイントをご紹介致します。海外企業の日本国内支店や営業所などはその関係性が明瞭ですので、さほどの配慮はいりません。しかし、企業内転勤ビザは「関連会社」もその射程範囲です。この場合は、その「関連性(単なる業務提携関係ではありません。)」を入管に認めてもらえるかどうかがポイントとなります。

 企業内転勤ビザの基本的な審査ポイントは、①転勤先会社と前会社との関係性 ②転勤前の会社で1年以上の勤務実績 ③転勤の前後で、技術・人文知識・国際業務で認められる業務内容 ④会社の安定性・継続性 ⑤日本人と同等の報酬 となります。尚、審査ポイントは上記五つ以外にも多々あります(本人の経歴、日本在留状況など)。

1 会社同士の関係性

よくある企業内転勤の例を列挙しますので、会社の状況に当てはめて参考にしてみてください。

  • 海外本社から日本支社への転勤、出向
  • 海外支社から日本本社への転勤、出向
  • 海外本店から日本支店への転勤、出向
  • 海外支店から日本本店への転勤、出向
  • 親会社から子会社、孫会社への転勤、出向
  • 子会社、孫会社から親会社への転勤、出向
  • 子会社間での転勤、出向
  • 子会社から孫会社への転勤、出向
  • 親会社から関連会社への転勤、出向

 関連会社間での転勤は、企業内転勤ビザには該当しません。また、孫会社同士の転勤は、基本的には、認められないことが多いです。日本国内の転勤先である事業所は、支社、支店、営業所、駐在所などが含まれます。

 親会社、子会社、関連会社などの定義は、財務諸表規則8条の通りです。転勤先の会社が、転勤前の会社と、定義通りの関係にあるのかはよく確認してください。「関連会社」の定義に当てはまっているのか疑義がある場合は、申請前に入管窓口にて、会社同士の関係を示す資料を提示しながら相談するのが良いと思います。

2 会社状況・業務内容・転勤期間・報酬について

 会社は安定的、継続的に事業を行っている会社である必要があります。日本に新たに日本法人(子会社)を設立して、そこに従業員として海外従業員を出向させたいのであれば、出向元(親会社)の会社財務状況や安定性が重要となります。

 企業内転勤ビザで認められる業務内容は、技術・人文知識・国際業務ビザで認められる業務内容と同じです。単純労働は不可となります。これは、転勤前の業務内容でも転勤後の業務内容でも同様です。しかし、転勤前と転勤後の業務内容が同内容である必要はありません。尚、技術・人文知識・国際業務で求められる「大卒等の学歴」は、企業内転勤ビザの場合は不要です。

 企業内転勤ビザは、転勤ですので、通常は、転勤期間が定められていると思います。転勤期間を明示した申請が望まれます。技術・人文知識・国際業務は「就労期間の定めなし」での申請が可能であり、この事と区別するためにも、企業内転勤ビザは「就労期間」をしっかりと決めて申請します。期間を定めたからといって、その期間が終わればすぐに帰国しなければならないという事ではありません。必要に応じて、必要な期間、ビザの更新は可能です。

 報酬は、「日本人が受けるのと同等の報酬」となります。海外の会社から日本支社への転勤の場合、海外会社から給料が支払われることが多いと思いますが、稀に、現地通貨で支払い、日本円に換算すると、とても給料が低くなることがあります。その場合は、為替レートでの不足分を、日本支店が補うなどして、「日本人と同等の報酬」を実現する必要があります。

3 その他のビザとの関係

  • 短期ビザとの関係

 3ヵ月程度の日本への転勤であれば、短期ビザでも良いのでは?と考えるかもしれません。日本への転勤の目的が、報酬を伴わないものであり、かつ、商談、既存客へのアフターフォロー、市場調査、販売を伴わない宣伝活動等であれば短期ビザでも良いような気がします。

 しかし、「転勤」ですので、ほとんどの場合で上記活動の範囲を超えた活動=就労に該当すると考えます。したがって、期間が短いからと言って安易に短期ビザで入国するのではなく、適切な期間、3ヵ月、1年などの企業内転勤ビザを取得する事が肝要です。

  • 技術・人文知識・国際業務ビザとの関係

   技術・人文知識・国際業務ビザ は、3年若しくは10年の実務経験、または大卒等の学歴、が必要となります。しかし、企業内転勤ビザは、転勤前会社での1年以上の勤務実績、で申請する事が可能です。

 したがって、学歴要件が満たせるのであれば、技術・人文知識・国際業務ビザを検討しても良いです。学歴要件が満たせなく、しかし、勤務実績1年以上があるのであれば、企業内転勤ビザを検討することになります。

 また、給料の支払い者ですが、技術・人文知識・国際業務ビザでは、雇用契約をした日本の会社である必要がありますが、企業内転勤ビザでは、海外本社でも日本支社でも、給料支払い者になりえます。

  • 経営・管理ビザとの関係

 日本への転勤者が、日本支社などの役員、部長、支店長、工場長など管理職に就任する場合は、経営・管理ビザを取得する事になります。

 経営・管理ビザで、管理職に就任する場合は、「事業の経営・又は管理について3年以上の経験を有すること」という許可要件がついてきますので、注意が必要です。この3年以上の経験は、「大学院でのMBA過程の履修期間」を含めて考えることができます。